会社員の給与明細を見ると、「厚生年金保険料」は毎月引かれていますが、「国民年金保険料」という項目はありません。
そこで、
「会社員は国民年金保険料を払っていないの?」
「それなのに、なぜ65歳になると老齢基礎年金を受け取れるの?」
「厚生年金保険料の中に国民年金保険料が含まれているの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
特に誤解されやすいのが、
「会社員が払っている厚生年金保険料から、国民年金の定額保険料相当額を差し引き、残った部分が厚生年金の保険料になる」
という考え方です。
実際の制度はこのような個人単位の差し引き計算にはなっていません。
この記事では、第2号被保険者である会社員・公務員と国民年金・厚生年金の関係について、できるだけ分かりやすく解説します。
会社員も国民年金の「第2号被保険者」

まず知っておきたいのが、日本の公的年金制度の基本構造です。
国民年金には、加入者の立場によって大きく3つの区分があります。
| 区分 | 主な対象者 | 保険料の基本的な仕組み |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業者・学生など | 国民年金保険料を自分で納付 |
| 第2号被保険者 | 厚生年金に加入する会社員・公務員 | 厚生年金保険料を負担 |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される一定の配偶者 | 本人が国民年金保険料を個別に納付する必要はない |
つまり、会社員は「厚生年金だけに加入していて、国民年金とは無関係」というわけではありません。
厚生年金に加入する会社員などは、原則として国民年金の第2号被保険者でもあります。
日本の公的年金はよく「2階建て」と表現されます。
1階部分が国民年金(基礎年金)、2階部分が会社員などが加入する厚生年金です。
そのため、第2号被保険者として加入した期間は、一定の要件のもとで老齢基礎年金にも反映され、さらに厚生年金の加入実績に応じた老齢厚生年金も受け取る仕組みになっています。
会社員の給与から国民年金保険料は引かれていない
ここが今回の重要なポイントです。
自営業者などの第1号被保険者は、毎月決められた国民年金保険料を納めます。
一方、会社員の給与明細には通常、
「厚生年金保険料」
として保険料が記載されています。
会社員が負担する厚生年金保険料は、基本的に、
標準報酬月額 × 厚生年金保険料率
によって計算されます。
厚生年金保険料率は18.3%で、原則として会社と従業員が半分ずつ負担するため、本人負担は9.15%です。
たとえば標準報酬月額が30万円なら、単純計算では、
30万円 × 18.3% = 54,900円
となり、労使折半なら、
本人負担27,450円
会社負担27,450円
となります。
ここで大切なのは、本人負担の27,450円から第1号被保険者が納める国民年金保険料相当額を差し引いているわけではないという点です。
「厚生年金-国民年金=厚生年金部分」ではない
年金制度を勉強していると、次のような説明を見かけることがあります。
厚生年金保険料-国民年金保険料=実質的な厚生年金部分
これは制度上の保険料計算としては誤りです。
イメージすると、次のような違いがあります。
【誤ったイメージ】
会社員が負担する厚生年金保険料
↓
国民年金保険料相当額を差し引く
↓
残った金額が厚生年金部分
このような個人別の計算は行われません。
【実際のイメージ】
給与・賞与
↓
標準報酬月額・標準賞与額などを基礎に厚生年金保険料を計算
↓
会社員と会社が厚生年金保険料を負担
↓
厚生年金制度全体から基礎年金の財源へ拠出
つまり、
「自分の厚生年金保険料のうち○円が国民年金、残り○円が厚生年金」
というように、個人単位で切り分けているわけではないのです。
それでは会社員の基礎年金は誰が負担している?
ここで、
「それなら会社員の老齢基礎年金の財源はどうなっているの?」
という疑問が出てきます。
そこで登場するのが**「基礎年金拠出金」**です。
第2号被保険者については、厚生年金制度から基礎年金の財源に必要な金額が拠出されます。
重要なのは、これが、
「会社員Aさんが払った厚生年金保険料から、国民年金保険料相当額を抜き出して国民年金へ移す」
という仕組みではないことです。
厚生年金制度という大きな財布から、制度全体として基礎年金の財源を負担していると考えると理解しやすいでしょう。
第3号被保険者の存在を考えるとさらに分かりやすい
この仕組みを理解するときに重要なのが、第3号被保険者です。
第3号被保険者は、厚生年金に加入する第2号被保険者に扶養されている一定の配偶者です。
第3号被保険者本人は、国民年金保険料を個別に納付していません。
それでも一定の要件を満たす第3号被保険者期間は、老齢基礎年金の計算上、保険料納付済期間として扱われます。
では、その財源はどうなっているのでしょうか。
これについても、第2号被保険者を抱える厚生年金制度などが基礎年金拠出金を負担する仕組みとなっています。
したがって、
「夫の厚生年金保険料から妻の国民年金保険料を毎月1人分差し引いている」
という仕組みでもありません。
個人対個人ではなく、公的年金制度全体で支える仕組みとして理解することが大切です。
なぜ「厚生年金の中に国民年金保険料が含まれる」と誤解しやすいのか
誤解が生まれやすい理由の一つが、日本の公的年金が「2階建て」と説明されることです。
会社員は将来、
老齢基礎年金+老齢厚生年金
を受け取るため、
「毎月払っている厚生年金保険料も、基礎年金部分と厚生年金部分の2つに分かれているのでは?」
と思いやすいのです。
しかし、
「将来受け取る年金が2階建てであること」と「毎月の個人の保険料を2つに分割して計算すること」は別の話です。
ここを分けて考えると理解しやすくなります。
第1号と第2号では保険料の決まり方そのものが違う
さらに重要なのが、第1号被保険者と第2号被保険者では保険料の計算方法自体が違うことです。
第1号被保険者の国民年金保険料は基本的に定額です。
これに対して、第2号被保険者の厚生年金保険料は給与や賞与を基礎に計算されます。
| 項目 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 自営業者・学生など | 会社員・公務員など |
| 加入制度 | 国民年金 | 国民年金+厚生年金 |
| 本人が支払う保険料 | 国民年金保険料 | 厚生年金保険料 |
| 保険料 | 原則定額 | 報酬に応じて変動 |
| 事業主負担 | なし | 原則労使折半 |
| 基礎年金の財源 | 国民年金保険料など | 厚生年金制度から基礎年金拠出金を負担 |
したがって、第1号被保険者の定額保険料を第2号被保険者の厚生年金保険料にそのまま当てはめること自体が適切ではありません。
試験問題ではどこを見抜けばいい?
FPやDCプランナーなどの年金問題では、この違いが問われることがあります。
たとえば、
「第2号被保険者が負担する厚生年金保険料から、第1号被保険者が負担する国民年金保険料相当額を控除した残額が、厚生年金部分の保険料となる」
といった趣旨の選択肢があれば注意しましょう。
ポイントは、
「個人の厚生年金保険料から国民年金保険料を差し引く」という計算はしない
ということです。
覚え方としては、
第1号=定額保険料を自分で納める
第2号=報酬比例の厚生年金保険料を負担する
基礎年金の財源=制度全体で基礎年金拠出金を負担する
と整理すると分かりやすいでしょう。
まとめ|「2階建ての給付」と「保険料の計算」は分けて考えよう
会社員や公務員などの第2号被保険者は、国民年金の第2号被保険者であると同時に厚生年金にも加入しています。
そのため、将来は原則として、
1階部分:老齢基礎年金
+
2階部分:老齢厚生年金
という形で年金を受け取ります。
しかし、だからといって毎月の厚生年金保険料が、
「国民年金保険料+厚生年金保険料」
という2つの個人別パーツに分解されているわけではありません。
会社員の厚生年金保険料は、標準報酬月額や標準賞与額を基礎として厚生年金保険料率を使って計算されます。
そして基礎年金については、厚生年金制度全体から「基礎年金拠出金」という形で財源を負担しています。
したがって、
「厚生年金保険料から国民年金の定額保険料を引き、残りが厚生年金部分になる」
という考え方は誤りです。
年金制度を理解する際には、
「個人が毎月いくら払うのか」という保険料計算と、「制度全体で基礎年金をどう支えるのか」という財政の仕組みを分けて考える
ことが最大のポイントです。
それでは、ありがとうございました!

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