ニュースや資格試験でよく目にする「企業物価指数」「GDPデフレーター」「鉱工業生産指数」。
名前は聞いたことがあっても、
「企業物価指数と消費者物価指数は何が違うの?」
「GDPデフレーターはどうやって計算する?」
「原油価格が上がるとGDPデフレーターも上がるの?」
「鉱工業生産指数は景気とどんな関係がある?」
と聞かれると、意外と説明するのは難しいものです。
今回は、経済指標について出題された問題を題材に、それぞれの指標の意味や違いをわかりやすく解説します。
経済指標に関する問題

まず、次の問題を考えてみましょう。
わが国の経済指標に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
選択肢1
企業物価指数は、企業が生産した財の出荷時の価格や企業が提供したサービスの価格の変動を、個別の取引総額に応じたウエイトを加味して測定したものであり、日本銀行が毎月公表している。
選択肢2
GDPデフレーターは、実質GDPを名目GDPで除すことによって算出される物価指数であり、当該指数が持続的に上昇している場合、インフレーション圧力が高い状態にあると判断される。
選択肢3
原油価格などの輸入品価格の上昇は、その上昇分が国内の製品価格等に全て転嫁されない限り、GDPデフレーターの上昇要因となる。
選択肢4
経済産業省が公表する鉱工業生産指数は、鉱工業生産活動の全体的な水準の推移を示す指標であり、景気動向指数の一致系列に採用されている。
正解は
正解は選択肢4です。
この問題を解くためには、次の4つのポイントを理解しておく必要があります。
- 企業物価指数は何を対象としているのか
- GDPデフレーターの計算方法
- 輸入物価とGDPデフレーターの関係
- 鉱工業生産指数と景気動向指数の関係
一つずつ見ていきましょう。
選択肢1|企業物価指数に「サービス」は含まれない
選択肢1は不適切です。
間違っているポイントは「企業が提供したサービスの価格」まで企業物価指数に含めているところです。
日本銀行は、企業間で取引される財を対象とする「企業物価指数」と、企業間で取引されるサービスを対象とする「企業向けサービス価格指数」を別々に作成しています。(日本ボードゲーム協会)
つまり、
| 指標 | 対象 |
|---|---|
| 企業物価指数(CGPI) | 企業間で取引される財 |
| 企業向けサービス価格指数(SPPI) | 企業間で取引されるサービス |
という違いがあります。
例えば、鉄鋼、化学製品、機械など「モノ」の企業間価格を見る場合には企業物価指数が重要になります。
一方、運輸、広告、情報通信などの企業向けサービス価格については、企業向けサービス価格指数を見ることになります。
日本銀行では両指数を月次で作成しています。(日本ボードゲーム協会)
試験での覚え方
「企業物価=モノ、企業向けサービス価格=サービス」
と覚えておけば判断しやすいでしょう。
選択肢2|GDPデフレーターは「名目GDP÷実質GDP」
選択肢2も不適切です。
理由は、GDPデフレーターの計算式が逆だからです。
GDPデフレーターは基本的に、
GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP×100
と考えます。
日本銀行もGDPデフレーターについて、国民経済計算における名目付加価値額と実質付加価値額の比から事後的に計算される物価指数と説明しています。(日本ボードゲーム協会)
例えば、
- 名目GDP=550兆円
- 実質GDP=500兆円
だったとしましょう。
この場合、
550兆円÷500兆円×100=110
となります。
GDPデフレーターが上昇しているということは、国内で生産された財やサービスの価格水準が上昇していることを示します。
したがって、継続的な上昇は物価上昇を判断する材料になります。
しかし問題文では、
「実質GDP÷名目GDP」
となっているため、選択肢全体としては不適切です。
覚え方
「名目÷実質=GDPデフレーター」
この順番をそのまま覚えてしまいましょう。
選択肢3|原油価格が上がればGDPデフレーターも上がるとは限らない
選択肢3も不適切です。
ここが今回の問題で最も難しいポイントでしょう。
「原油価格が上がる→物価が上がる→GDPデフレーターも上がる」
と考えたくなりますが、GDPデフレーターではそう単純ではありません。
GDPを支出面から考えると、
GDP=個人消費+投資+政府支出+輸出-輸入
となります。
重要なのが、輸入はGDPから控除されるという点です。
原油の多くを海外から輸入している日本では、原油価格が上昇すると輸入価格が上昇します。
ところが、企業がそのコスト上昇分を国内販売価格へ十分に転嫁できなかった場合、
原油価格上昇
↓
輸入価格上昇
↓
企業の仕入れコスト上昇
↓
販売価格には十分転嫁できない
↓
国内企業の付加価値・利益を圧迫
という動きが起こります。
そのため、輸入価格の上昇はGDPデフレーターを単純に押し上げるのではなく、国内価格へ転嫁されない部分についてはGDPデフレーターを押し下げる方向に働きます。
ここが消費者物価指数などとGDPデフレーターを考える際の大きな違いです。
試験で狙われやすいポイント
「原油価格上昇=GDPデフレーター上昇」と覚えないこと。
輸入価格の上昇を国内価格へ転嫁できるかどうかが重要になります。
選択肢4|鉱工業生産指数は景気の「一致系列」
選択肢4が適切で、今回の正解です。
鉱工業生産指数は経済産業省が作成している重要な経済指標です。
経済産業省によると、生産指数は「鉱工業生産活動の全体的な水準の推移」を示します。(経済産業省)
例えば、
- 自動車
- 電子部品
- 半導体関連
- 生産用機械
- 化学製品
など、日本の製造業を中心とした生産活動が活発になっているのか、落ち込んでいるのかを把握できます。
さらに重要なのが、景気動向指数の一致系列に採用されていることです。
一致系列とは、景気の動きとほぼ同じタイミングで動く経済指標です。
経済産業省の解説でも、一致系列を「景気と同時期に動く指数」としたうえで、代表的な系列として「生産指数(鉱工業)」などを挙げています。(経済産業省)
したがって、
鉱工業生産指数=経済産業省=景気動向指数の一致系列
とセットで覚えておくとよいでしょう。
企業物価指数・GDPデフレーター・鉱工業生産指数を比較
ここまでの内容を整理してみましょう。
| 指標 | 公表・作成主体 | 主に何を見る? | 覚えるポイント |
|---|---|---|---|
| 企業物価指数 | 日本銀行 | 企業間で取引される財の価格 | モノ |
| 企業向けサービス価格指数 | 日本銀行 | 企業間のサービス価格 | サービス |
| GDPデフレーター | 内閣府 | 国内で生み出された付加価値の価格変化 | 名目÷実質 |
| 鉱工業生産指数 | 経済産業省 | 鉱工業の生産活動 | 一致系列 |
特に資格試験では、**「どの省庁・機関が公表しているか」+「何を表す指標か」**をセットで問われるケースがあります。
なぜ経済指標を理解することが大切なのか
これらの経済指標は試験問題を解くためだけのものではありません。
例えば、日本銀行が金融政策を考える際には物価動向が重要になります。
また、企業物価が上昇しているのに消費者価格への転嫁が進んでいなければ、企業の利益が圧迫される可能性があります。
鉱工業生産指数が低下していれば、製造業を中心に景気が弱くなっている可能性を考える材料になります。
つまり、
物価を見る指標
と
景気を見る指標
を組み合わせることで、日本経済の状態をより立体的に捉えられるようになります。
投資をする場合にも、企業業績や株価の背景にある景気・物価・金利の動きを理解するうえで役立ちます。
まとめ|「誰が・何を・どう測るか」で覚えよう
今回の問題の正解は選択肢4です。
最後に重要ポイントを整理します。
企業物価指数
→ 日本銀行
→ 企業間で取引される「財」の価格
企業向けサービス価格指数
→ 日本銀行
→ 企業間で取引される「サービス」の価格
GDPデフレーター
→ 「名目GDP÷実質GDP×100」
→ 国内で生産された財・サービスの物価動向を見る
輸入価格上昇
→ GDPデフレーターを単純に押し上げるわけではない
→ 国内価格に転嫁できない場合は押し下げ方向に働く
鉱工業生産指数
→ 経済産業省
→ 鉱工業の生産活動を見る
→ 景気動向指数の「一致系列」
資格試験では経済指標の細かな定義を丸暗記するより、
「誰が公表するのか」
「何を対象としているのか」
「景気や物価とどう関係するのか」
という3点で整理すると覚えやすくなります。
今回なら、まず
「名目÷実質=GDPデフレーター」
「鉱工業生産指数=経済産業省=一致系列」
の2つを確実に覚えておきましょう。
それでは、ありがとうございました!

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