投資信託の基準価額はいつ決まる?海外株式の評価・信託財産留保額をわかりやすく解説

NISAなどをきっかけに投資信託を購入する人が増えていますが、意外と分かりにくいのが「基準価額」の仕組みです。

「朝9時に表示されている価格で買えるの?」

「米国株に投資する投資信託は、いつの株価を使って基準価額を計算する?」

「信託財産留保額は運用会社に支払う手数料なの?」

こうした疑問は、投資信託の仕組みを理解するうえでも重要です。

今回は、追加型の公募株式投資信託に関する問題を題材に、基準価額、海外資産の評価、信託財産留保額について分かりやすく解説します。


目次

投資信託の基準価額等に関する問題

日本国内で設定された追加型の公募株式投資信託(委託者指図型投資信託)の基準価額等に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。

(a)投資信託の基準価額は、原則として、毎日午前9時に公表され、その日に公表された基準価額で希望する受益権口数の売買注文を行うことにより、その日の売買が成立する。

(b)米国市場に上場している株式を投資対象とする投資信託の基準価額の算出に当たって、その株式の価格は、原則として基準価額を算出する日の前営業日の米国市場における終値で評価し、基準価額を算出する日の前営業日における為替相場で邦貨換算する。

(c)信託財産留保額は、投資信託を信託期間中に換金する際に徴収される費用であり、換金時の基準価額に所定の料率を乗じて算出された金額が投資信託委託会社の収入となる。

選択肢

  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 0(なし)

正解は

3つの記述を○×で整理すると、

記述判定ポイント
×基準価額が分からない状態で注文する
海外株式は前営業日の現地終値などで評価
×信託財産留保額は運用会社の収入ではない

したがって、適切なものは1つです。

**正解は「1)」**となります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。


⒜は不適切|投資信託は朝9時の基準価額で買うわけではない

⒜は不適切です。

ここで重要なのが、一般的な投資信託に採用されているブラインド方式です

株式の場合、証券取引所が開いている時間なら、

「現在1株2,000円だから買おう」

というように現在の市場価格を確認しながら注文できます。

しかし、一般的な追加型投資信託では仕組みが異なります。

投資信託の基準価額は、組み入れている株式や債券などの資産を評価し、原則として1日1回計算されます。

そのため、

注文する

その時点では適用される基準価額が分からない

注文締切後などに基準価額が計算される

その基準価額を基に取引が成立する

という流れになります。

つまり、

「今日の基準価額を見て、その価格で今日買う」

という株式のような取引ではありません。


なぜ投資信託は価格が分からない状態で注文するのか?

これには重要な理由があります。

仮に投資家が、その日の基準価額を知ってから同じ基準価額で購入・換金できるとしましょう。

すると、その後の市場の値動きを利用して有利な取引ができる可能性があります。

既に投資信託を保有している投資家との公平性が損なわれかねません。

そこで一般的な投資信託では、注文時点では適用される基準価額が分からないブラインド方式が採用されています。

覚え方

投資信託=「値段を見てから注文」ではなく「注文してから値段が決まる」

とイメージすると分かりやすいでしょう。

なお、ETF(上場投資信託)は取引所でリアルタイムに売買されるため、一般的な非上場の投資信託とは仕組みが異なります。


⒝は適切|米国株は前営業日の終値などを使って評価する

⒝は適切です。

米国株式を組み入れている日本の投資信託を考えてみましょう。

日本で基準価額を計算する時間帯には、時差の関係から米国市場はまだその日の取引を終えていません。

そこで原則として、基準価額を算出する際には、利用可能な直近の市場価格を使って資産を評価します。

米国市場に上場している株式なら、原則として前営業日の米国市場の終値が評価の基礎になります。

さらに米国株はドル建てです。

日本の投資信託の基準価額は円で表示する必要があるため、ドル建ての株式価値を為替相場によって円へ換算します。

イメージすると、

米国株式の評価額(ドル)
×
為替レート(円/ドル)

円換算した評価額

となります。


米国株ファンドは「株価」と「為替」の両方が重要

この仕組みは、実際に投資信託を運用するときにも重要です。

例えば、米国株が10%上昇したとしても、同時に大幅な円高になれば、円換算した資産価値の上昇率は小さくなる可能性があります。

反対に、

米国株上昇+円安

となれば、円換算した基準価額には双方がプラス方向に作用します。

為替ヘッジなしの米国株投資信託なら、

米国株の値動き+為替の値動き

の両方が基準価額に影響すると考えておくことが大切です。

例えば、

1ドル=150円 → 160円

と円安になれば、同じ100ドルの株式でも、

150円なら
100ドル×150円=15,000円

160円なら
100ドル×160円=16,000円

となります。

米国株の価格が変わらなくても、為替だけで円換算額が変化するわけです。


⒞は不適切|信託財産留保額は運用会社の収入ではない

⒞も不適切です。

この問題で特に重要なのが、

「信託財産留保額は誰のお金になるのか?」

という点です。

信託財産留保額は、投資信託を途中で換金する投資家に負担してもらうことがある金額です。

しかし、一般的な「手数料」とは性質が異なります。

最大のポイントは、

投資信託委託会社(運用会社)の収入になるわけではない

ということです。

信託財産留保額は信託財産に留保されます


なぜ解約する人から信託財産留保額を取るのか?

例えば、ある投資家が投資信託を大量に解約したとします。

ファンドはその投資家へ現金を支払うため、保有している株式や債券などを売却しなければならない場合があります。

すると、

  • 株式などの売買コスト
  • その他の取引コスト

などが発生する可能性があります。

これらのコストをすべてファンドに残っている投資家が負担すると、不公平になってしまいます。

そこで換金する投資家に一定額を負担してもらい、ファンドに残っている投資家との公平性を確保するという考え方があります

これが信託財産留保額です。

したがって、

信託財産留保額

運用会社の利益 ×

信託財産に留保 ○

と覚えておきましょう。


信託報酬と信託財産留保額はまったく違う

試験では「信託報酬」と「信託財産留保額」を混同させる問題にも注意が必要です。

信託報酬

投資信託を運用・管理してもらうために、信託財産から継続的に差し引かれる費用です。

運用会社、販売会社、受託会社などの報酬になります。

信託財産留保額

換金時などに投資家が負担する場合があります。

その金額は信託財産に残されるもので、運用会社の収入ではありません。

項目信託報酬信託財産留保額
主な目的運用・管理への対価換金に伴うコスト等への配慮
負担保有中に信託財産から継続的に負担主に換金時
運用会社等の収入×
信託財産に留保×

ここは試験で非常に狙われやすいポイントです。


基準価額とはそもそも何なのか?

今回の問題を理解するために、基準価額そのものについても確認しておきましょう。

投資信託では、保有している株式や債券などの資産から負債を差し引いたものを純資産総額といいます。

そして純資産総額を受益権口数で割ることで、1口当たりの価値を求めます。

一般には1万口当たりで基準価額が表示される商品が多くなっています。

つまり基準価額は、

「その投資信託が現在どれくらいの価値を持っているのか」

を示す重要な数字です。

ただし株価のように市場でリアルタイムに変動している価格ではない、という違いを理解しておきましょう。


投資信託の3つの重要ポイントを整理

今回の問題をまとめると次のようになります。

論点覚えておきたいポイント
基準価額原則1日1回算出
注文方法適用される基準価額が分からない状態で注文
ブラインド方式投資家間の公平性を確保
米国株式の評価原則として利用可能な直近の米国市場終値
海外資産為替相場で円換算する
信託財産留保額換金時などに負担する場合がある
留保額の帰属信託財産に留保
運用会社の収入信託財産留保額は運用会社の収入ではない

まとめ|「注文してから価格が決まる」「留保額はファンドに残る」

今回の問題では、適切な記述は**⒝の1つだけ**です。

したがって、正解は、

1)1つ

となります。

試験直前には、次の3つを覚えておきましょう。

⒜ ×
投資信託は朝9時に公表された価格を見て、その価格で注文するわけではない。

一般的な投資信託ではブラインド方式が採用され、適用される基準価額が分からない状態で注文します。

⒝ ○
海外株式は直近の現地市場価格などを使い、為替相場によって円換算する。

米国株ファンドでは「米国株価」と「ドル円」の両方が基準価額に影響します。

⒞ ×
信託財産留保額は運用会社の収入ではない。

換金する投資家と残る投資家との公平性などを図るための仕組みで、徴収された金額は信託財産に留保されます。

特に覚えやすいのは、

「投資信託=注文してから値段が決まる」

「信託財産留保額=運用会社ではなくファンドに残る」

という2つです。

この基本を押さえておけば、基準価額や投資信託の費用に関する類似問題にも対応しやすくなるでしょう。

それでは、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

金融・不動産・年金・リスク管理分野を専門とし、FP技能士1級、宅地建物取引士、管理業務主任者、貸金業務取扱主任者など多数の国家資格・金融資格を保有。

銀行業務検定では財務・法務・税務・年金・融資管理・金融リスクマネジメント等に合格し、近年はDX、生成AI、サイバーセキュリティ、サステナビリティ領域にも知見を広げている。

「難しい制度を、誰でも理解できる言葉で伝える」をテーマに、資産防衛・老後対策・金融リテラシー向上に関する情報発信を行っている。

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