投資分析で重要なサステナブル成長率と相関係数とは?ROE・PBR・PERから分散投資まで解説

株式投資では「どの企業を選ぶか」が重要ですが、それと同じくらい大切なのが「複数の資産をどのように組み合わせるか」です。

企業の成長力を考えるときに役立つ指標の一つが**サステナブル成長率(持続可能成長率)**です。

一方、複数の資産を組み合わせてリスクを抑える分散投資では、相関係数が重要になります。

一見するとまったく違う指標ですが、

サステナブル成長率=企業単体の成長力を見る

相関係数=資産同士の値動きの関係を見る

というように整理すると、投資分析における役割が分かりやすくなります。

今回は、ROE・PER・PBR・配当性向との関係からサステナブル成長率を理解するとともに、共分散・標準偏差から求められる相関係数について解説します。


目次

サステナブル成長率とは?

サステナブル成長率(Sustainable Growth Rate)とは、企業が利益の一部を内部留保し、それを再投資することで、現在の収益性や財務政策などを前提として持続できる成長率を考える指標です。

基本的な考え方は、

サステナブル成長率=ROE×内部留保率

です。

例えば、

  • ROE:8%
  • 内部留保率:60%

の企業なら、

8%×60%=4.8%

となります。

つまり、単純化すれば、企業が稼いだ利益を内部留保し、それを同じROEで再投資することで、年間4.8%程度の成長につなげられるという考え方です。


ROEとは何か?

サステナブル成長率を理解するには、まずROEを理解する必要があります。

ROE(自己資本利益率)は、

ROE=当期純利益÷自己資本×100

で求められます。

簡単にいえば、

「株主から預かった資本を使って、どれくらい利益を稼いだのか」

を見る指標です。

例えば、自己資本1,000億円の企業が年間100億円の純利益を上げた場合、

100億円÷1,000億円=10%

なのでROEは10%です。

同じ自己資本を使ってより大きな利益を生み出している企業ほど、ROEは高くなります。


PERとPBRからROEを求められる

投資分析では、ROEが直接示されていなくても、PERとPBRからROEを求めることができます。

代表的な関係式が、

ROE=PBR÷PER

です。

なぜこの関係になるのでしょうか。

PBRは、

PBR=株価÷BPS(1株当たり純資産)

です。

PERは、

PER=株価÷EPS(1株当たり利益)

です。

したがって、

PBR÷PER

を計算すると、

(株価÷BPS)÷(株価÷EPS)

となります。

株価が消えるので、

EPS÷BPS

が残ります。

これは、

1株当たり利益÷1株当たり純資産

ですから、ROEに対応します。

したがって、

ROE=PBR÷PER

という関係が成立します。


「PBR=PER×ROE」も覚えておくと便利

先ほどの式を変形すると、

PBR=PER×ROE

となります。

この関係は株式投資でも重要です。

PBRが高い企業を見ると、

「市場から評価されすぎている」

と単純に考えてしまうことがあります。

しかし、高いROEを継続できる企業であれば、高いPBRが一定程度説明できる場合があります。

反対にPBRが低くても、ROEそのものが低ければ、単純に「割安」とはいえない可能性があります。

したがって、

PER=利益に対する株価評価

PBR=純資産に対する株価評価

ROE=自己資本を使った収益力

を組み合わせて考えることが大切です。


内部留保率は「1-配当性向」

次に必要なのが内部留保率です。

企業は稼いだ利益をすべて配当として株主へ支払うわけではありません。

例えば利益100億円のうち40億円を配当に回せば、配当性向は40%です。

残った60億円は企業内部に留保されます。

したがって、

内部留保率=1-配当性向

となります。

配当性向40%なら、

1-0.40=0.60

なので内部留保率は60%です。


高配当なら企業として優れているとは限らない

ここから投資家にとって興味深い関係が見えてきます。

配当性向が高くなれば、株主が現在受け取る配当は増えます。

しかし、

配当性向上昇

内部留保率低下

再投資できる利益減少

サステナブル成長率低下

という関係も考えられます。

反対に、配当を抑えて利益を内部留保すれば、将来の事業へ再投資できる資金は増えます。

ただし、内部留保すれば必ず成長するわけではありません。

重要なのは、

「内部留保した資金を高い収益率で再投資できるか」

です。


ROEと配当政策をセットで考える

例えば、ROEが非常に高く、成長市場で投資機会も豊富な企業なら、利益を無理に配当せず、事業へ再投資した方が企業価値を高められる可能性があります。

一方、成熟企業で有望な投資先が少なければ、多額の利益を内部留保するより、配当や自社株買いで株主へ還元した方が合理的な場合もあります。

したがって、

「配当が多い会社=良い会社」

あるいは、

「内部留保が多い会社=成長企業」

と単純には判断できません。

ROE、成長機会、配当性向、資本政策をセットで見ることが重要です。


もう一つ重要な指標「相関係数」とは?

ここからは企業単体ではなく、ポートフォリオ全体を見る指標について考えます。

その代表が相関係数です。

相関係数とは、2つの資産の値動きがどの程度同じ方向、あるいは反対方向に動く傾向があるのかを示す指標です。

相関係数は、1から+1までの範囲を取ります

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相関係数「+1・0・-1」の意味

相関係数を理解するには、3つの数字を覚えておくと便利です。

+1に近い

2つの資産が同じ方向に動く傾向が非常に強いことを意味します。

Aが上昇するとBも上昇し、Aが下落するとBも下落するという関係です。

0に近い

2つの資産の値動きに線形な関係がほとんどない状態です。

Aが上昇したからといって、Bが上昇するとも下落するとも限りません。

-1に近い

2つの資産が反対方向に動く傾向が強いことを意味します。

Aが上昇するとBが下落し、Aが下落するとBが上昇するという関係です。


相関係数はどうやって求める?

相関係数は、

相関係数=2資産の共分散÷(A資産の標準偏差×B資産の標準偏差)

によって求めます。

ここで登場する「共分散」と「標準偏差」が重要です。

共分散

→2つの資産がどの程度同じ方向・反対方向に動くかを見る

標準偏差

→それぞれの資産価格・リターンがどの程度変動するかを見る

という違いがあります。

共分散だけでは資産ごとの変動幅によって数字の大きさが変わってしまいます。

そこで、それぞれの標準偏差で調整することによって、-1から+1までの比較しやすい指標にしたものが相関係数です。


なぜ相関係数が分散投資で重要なのか?

「分散投資」と聞くと、

たくさんの銘柄を持てばよい

と思われがちです。

しかし、本当に重要なのは資産の数だけではありません。

例えば、値動きが非常によく似ている株式を10銘柄保有したとします。

相場全体が下落したときに10銘柄が一斉に下落すれば、銘柄数を増やした割に十分な分散効果を得られない可能性があります。

一方、値動きの異なる資産を組み合わせれば、一方が下落したときにもう一方が下支えする可能性があります。

つまり、

「何銘柄持つか」より「どのような値動きの資産を組み合わせるか」

が重要なのです。


相関係数が低ければ必ず安全なのか?

ここにも注意が必要です。

相関係数は過去のデータから計算されることが多く、将来も同じ関係が続くとは限りません。

平常時には相関が低かった資産でも、金融危機など市場が大きく混乱すると、同時に下落することがあります。

また、相関係数は基本的に線形な関係を見る指標であり、すべての依存関係を表すものではありません。

したがって相関係数だけで投資判断をするのではなく、

  • 投資対象
  • 地域
  • 業種
  • 通貨
  • 金利リスク
  • 信用リスク
  • 投資期間

なども含めてポートフォリオを考える必要があります。


サステナブル成長率と相関係数はどう使い分ける?

今回の2つの指標を整理すると、役割は大きく異なります。

指標主な目的重要な要素
サステナブル成長率企業の持続的な成長力を考えるROE・内部留保率
ROE株主資本に対する収益力純利益・自己資本
PBR・PER株価評価と収益力の関係を見る株価・EPS・BPS
相関係数2資産の値動きの関係を見る共分散・標準偏差
標準偏差資産の値動きの大きさを見るリターンのばらつき

つまり、

企業を選ぶ段階
→ ROE・PER・PBR・サステナブル成長率

資産を組み合わせる段階
→ 標準偏差・共分散・相関係数

という使い分けができます。


個人投資家は「企業分析」と「資産配分」の両方を見る

株式投資では「良い企業を探すこと」に意識が向きがちです。

しかし、どれほど優良な企業でも株価が大きく下落することはあります。

そこで、

①企業分析

ROE、PER、PBR、成長率、財務内容などを見る。

そして、

②ポートフォリオ分析

資産同士の相関やリスクを考え、投資先を分散する。

この2段階で考えることが重要になります。

「どの銘柄を買うか」だけではなく、

「その銘柄を自分の資産全体の中でどのような役割にするのか」

まで考えることで、投資判断の質を高めることができます。


まとめ|企業の成長力とポートフォリオの分散を数字で考えよう

サステナブル成長率と相関係数は、一見するとまったく異なる指標です。

しかし、どちらも投資を感覚だけではなく数字で考えるための道具です。

サステナブル成長率の基本は、

サステナブル成長率=ROE×内部留保率

です。

さらに、

ROE=PBR÷PER

内部留保率=1-配当性向

という関係を押さえておくと、企業の収益力・株価評価・株主還元をつなげて考えられます。

一方、相関係数は、

-1~+1

の範囲で2つの資産の値動きの関係を表します。

重要なのは、

企業分析では「どれだけ稼ぎ、その利益をどう使うか」

ポートフォリオ分析では「資産同士がどのように動くか」

を見ることです。

「成長性の高い企業を選ぶこと」と「資産を適切に分散すること」。

この両方を理解することが、長期的な資産形成を考えるうえで重要な基本となります。

この記事は、「ROE→内部留保→サステナブル成長率」という企業側の図と、「相関+1・0・-1→分散効果」という投資家側の図を左右に配置した漫画チックな解説画像にすると、かなり理解しやすくなります。

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この記事を書いた人

金融・不動産・年金・リスク管理分野を専門とし、FP技能士1級、宅地建物取引士、管理業務主任者、貸金業務取扱主任者など多数の国家資格・金融資格を保有。

銀行業務検定では財務・法務・税務・年金・融資管理・金融リスクマネジメント等に合格し、近年はDX、生成AI、サイバーセキュリティ、サステナビリティ領域にも知見を広げている。

「難しい制度を、誰でも理解できる言葉で伝える」をテーマに、資産防衛・老後対策・金融リテラシー向上に関する情報発信を行っている。

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