60歳以降も厚生年金に入ると年金は増える?第2号被保険者と経過的加算をわかりやすく解説

「国民年金は20歳から60歳まで」と聞いたことがある人は多いでしょう。

では、60歳を過ぎても会社員として働き、厚生年金保険料を払っている場合、その保険料は将来の年金にどのように反映されるのでしょうか。

また、

「20歳未満で会社員になった場合は国民年金に入っているの?」
「60歳以降は第2号被保険者ではなくなる?」
「60歳以降に払った厚生年金保険料は掛け捨てにならない?」
「経過的加算とは何?」

と疑問を持つ人も少なくありません。

特に年金の資格試験では、「20歳以上60歳未満」という国民年金の原則と、厚生年金に加入している人の「第2号被保険者」のルールが混同されやすいところです。

本記事では、公的年金制度の基本から、20歳未満・60歳以上の厚生年金加入、そして重要な「経過的加算」まで分かりやすく解説します。


目次

1.そもそも国民年金の被保険者は3種類ある

日本の公的年金制度では、原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が国民年金に加入します。(年金ホームページ)

国民年金の被保険者は、大きく次の3種類です。

区分主な対象者
第1号被保険者自営業者、学生、無職の人など
第2号被保険者厚生年金保険に加入する会社員・公務員など
第3号被保険者第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者

ここで試験でも非常に重要なのが、第1号・第3号と第2号では「年齢」の考え方が違うことです。


2.第1号・第3号は「20歳以上60歳未満」が基本

自営業者や学生などが該当する第1号被保険者は、原則として「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満」の人です。

第3号被保険者も原則として20歳以上60歳未満です。

したがって、

  • 19歳の学生
  • 61歳の自営業者

などは、原則として第1号被保険者にはなりません。

ただし60歳以降でも、老齢基礎年金を満額に近づけるため国民年金に任意加入できる場合があります。


3.厚生年金に加入すると20歳未満でも第2号被保険者になる

ここが年金制度で非常に間違いやすいポイントです。

例えば高校卒業後、18歳で会社に就職し、厚生年金保険の適用を受けたとします。

「国民年金は20歳からだから、18歳では国民年金とは関係ない」

と思うかもしれませんが、そうではありません。

厚生年金保険の被保険者となった人は、原則として国民年金の第2号被保険者にもなります。

日本年金機構も、第2号被保険者を「会社などに勤務する厚生年金保険の被保険者、共済組合員」と説明しています。(年金ホームページ)

つまり、

18歳で会社員として厚生年金に加入
→ 厚生年金保険の被保険者
→ 同時に国民年金の第2号被保険者

という関係になります。

試験対策ポイント

「国民年金=必ず20歳から」と覚えてしまうと間違えます。

20歳以上60歳未満という年齢要件を強く意識するのは、主として第1号・第3号被保険者です。


4.60歳を過ぎて働いても第2号被保険者になれる

反対に60歳以上でも会社員として厚生年金に加入していれば、原則として第2号被保険者となります。

例えば、

62歳・会社員・厚生年金加入

であれば、原則として国民年金の第2号被保険者です。

ここは重要です。

「国民年金は60歳までだから、60歳を超えた会社員は第2号被保険者ではない」

という理解は正しくありません。

ただし65歳以上には重要な例外がある

65歳以上で、

老齢基礎年金・老齢厚生年金などの老齢・退職を支給事由とする年金の受給権を持つ人

については、厚生年金保険に加入していても国民年金の第2号被保険者にはなりません。(年金ホームページ)

つまり、

「厚生年金保険の被保険者」と「国民年金の第2号被保険者」は完全に同じではない

ということです。

ここは資格試験でも狙われやすい論点です。


5.老齢基礎年金の計算対象は原則20歳以上60歳未満

では、18歳から厚生年金に加入した2年間や、60歳以降に厚生年金に加入した期間は、老齢基礎年金を増やすのでしょうか。

ここで重要なのが、

老齢基礎年金の額を計算する基本的な期間は20歳以上60歳未満

というルールです。

満額の老齢基礎年金は原則として40年間、つまり480月を基準に計算します。

そのため、

  • 18歳~20歳未満
  • 60歳以降

の厚生年金加入期間は、原則として老齢基礎年金の480月には直接入りません。

厚生労働省も、老齢基礎年金の額計算の基礎となる期間を「20歳以上60歳未満」と説明しています。(厚生労働省)

すると、こんな疑問が出てきます。

「60歳以降も厚生年金保険料を払っているのに、その分は無駄なの?」

もちろん、そうではありません。

そこで重要になるのが「経過的加算」です。


6.経過的加算とは?

経過的加算とは、簡単にいえば、

老齢基礎年金では評価されない厚生年金加入期間などを、老齢厚生年金側で補う仕組み

です。

特に現在では、

  • 20歳未満の厚生年金加入期間
  • 60歳以降の厚生年金加入期間

を年金額に反映させる役割が重要になっています。

厚生労働省も、20歳前または60歳以降の厚生年金加入期間について、その期間に対応する定額部分相当額を本来支給の老齢厚生年金に加算すると説明しています。(厚生労働省)


7.なぜ経過的加算という制度ができたのか

経過的加算を理解するには、1986年の年金制度改正を知ると分かりやすくなります。

現在の基礎年金制度が導入される以前、厚生年金には「定額部分」と「報酬比例部分」という考え方がありました。

ところが基礎年金制度が導入されると、公的年金の1階部分は原則20歳以上60歳未満を対象とする老齢基礎年金へ移行します。

その結果、

20歳未満や60歳以降に厚生年金へ加入していた期間が老齢基礎年金に反映されない

という問題が生じます。

そこで旧制度との調整や、基礎年金で評価されない期間を補うために設けられた仕組みが経過的加算です。

厚生労働省は経過的加算について、基礎年金を導入した昭和60年改正に伴う経過措置であり、定額部分相当額と老齢基礎年金相当額との差を老齢厚生年金に加算する制度としています。(厚生労働省)


8.経過的加算はどう計算される?

基本的な考え方は、

経過的加算額
=定額部分相当額-厚生年金加入期間に対応する老齢基礎年金相当額

です。(厚生労働省)

イメージすると、

① 厚生年金加入期間から定額部分相当額を計算

20歳未満や60歳以降を含む厚生年金加入期間を一定の上限まで評価します。

② 老齢基礎年金に反映されている部分を差し引く

20歳以上60歳未満の厚生年金加入期間については、基本的に老齢基礎年金側でも評価されています。

そこで①から②を差し引きます。

③ 残った部分が経過的加算

結果として、

20歳未満や60歳以降など、老齢基礎年金では評価されない厚生年金加入期間に対応する部分

が経過的加算として残るわけです。


9.60歳以降に働くと経過的加算が増えることがある

例えば、20歳から60歳までの国民年金に未納期間などがあり、老齢基礎年金が満額になっていない人を考えてみましょう。

60歳以降も会社員として働き、厚生年金に加入します。

この60歳以降の期間は、原則として老齢基礎年金の480月そのものには入りません。

しかし厚生年金加入期間として、

  • 報酬比例部分
  • 条件に応じて経過的加算

などを通じて老齢厚生年金額に反映されます。

したがって、

「60歳以降に厚生年金保険料を払っても意味がない」

という理解は間違いです。

日本年金機構も、厚生年金の加入期間が一定の月数に満たない場合などに経過的加算が加算されることを案内しています。(年金ホームページ)


10.注意:「60歳以降=第2号ではない」は誤り

ここは今回の知識整理で特に注意しておきたいところです。

例えば、

62歳で会社員として厚生年金に加入している人

は、原則として第2号被保険者です。

したがって、

60歳から65歳まで厚生年金に加入しても、第2号被保険者にはならない

という説明は正しくありません。

正しくは、

60歳以上でも厚生年金保険の被保険者であれば原則として第2号被保険者となる。ただし、65歳以上で老齢・退職を支給事由とする年金の受給権がある人は第2号被保険者から除外される

となります。(年金ホームページ)

年金問題では、

「60歳まで」という老齢基礎年金の計算期間と、

「第2号被保険者になれる年齢」

を分けて考えることが大切です。


11.経過的加算は特別支給の老齢厚生年金がない世代にも関係する

「経過的加算」という名前から、

「昔の人だけの制度なのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、そう単純ではありません。

特別支給の老齢厚生年金の「定額部分」を受け取らない世代であっても、65歳以降に受け取る本来の老齢厚生年金について経過的加算が発生することがあります。

特に、

  • 20歳になる前から会社員だった
  • 60歳以降も厚生年金に加入した

という人には関係する可能性があります。

厚生労働省も現在の経過的加算について、20歳前・60歳以降の厚生年金加入期間を補うことが「中心的な意義」になっていると説明しています。(厚生労働省)


12.試験で間違えやすいポイントを整理

最後に、FP・DCプランナーなどの年金問題で狙われやすい知識を整理しておきましょう。

論点正しい理解
国民年金の原則加入年齢20歳以上60歳未満
第1号被保険者原則20歳以上60歳未満
第3号被保険者原則20歳以上60歳未満
第2号被保険者厚生年金加入者が基本
20歳未満の会社員厚生年金加入なら第2号になり得る
60~64歳の会社員厚生年金加入なら原則第2号
65歳以上老齢・退職年金の受給権者は第2号から除外
老齢基礎年金の額計算原則20歳以上60歳未満
20歳未満・60歳以降の厚生年金期間老齢基礎年金には原則直接反映されない
その期間の年金評価報酬比例部分に加え、経過的加算に反映される場合がある
経過的加算定額部分相当額と基礎年金相当額との差額

まとめ|「加入資格」と「年金額の計算期間」を分けて考える

公的年金制度で最も混乱しやすいのが、

「国民年金は20歳以上60歳未満」

というルールです。

これだけを覚えてしまうと、

「20歳未満は第2号被保険者にならない」
「60歳以上は第2号被保険者ではない」

と誤解しやすくなります。

しかし、厚生年金に加入する会社員などについては、20歳未満や60歳以上であっても原則として国民年金の第2号被保険者になります。

一方、老齢基礎年金の額を計算する対象期間は原則20歳以上60歳未満です。

つまり、

「被保険者になる年齢」と「老齢基礎年金額に反映される年齢」は別のルール

なのです。

さらに、20歳未満や60歳以降の厚生年金加入期間については、老齢基礎年金に直接含まれなくても、老齢厚生年金の報酬比例部分や「経過的加算」に反映される可能性があります。

試験対策としては、次の3点をセットで覚えておくとよいでしょう。

① 第1号・第3号は原則20歳以上60歳未満
② 第2号は厚生年金加入者であることが基本
③ 老齢基礎年金で評価されない20歳前・60歳以降の厚生年金期間は経過的加算が重要

「20歳」「60歳」「65歳」という3つの年齢を整理できれば、国民年金・厚生年金の問題はかなり解きやすくなります。

それでは、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

金融・不動産・年金・リスク管理分野を専門とし、FP技能士1級、宅地建物取引士、管理業務主任者、貸金業務取扱主任者など多数の国家資格・金融資格を保有。

銀行業務検定では財務・法務・税務・年金・融資管理・金融リスクマネジメント等に合格し、近年はDX、生成AI、サイバーセキュリティ、サステナビリティ領域にも知見を広げている。

「難しい制度を、誰でも理解できる言葉で伝える」をテーマに、資産防衛・老後対策・金融リテラシー向上に関する情報発信を行っている。

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