毎日の食卓に欠かせない「醤油」。
スーパーの売り場を見ると、濃口醤油や薄口醤油だけでなく、たまり醤油、再仕込み醤油、白醤油など、さまざまな種類が並んでいます。
しかし、
「濃口と薄口は何が違うの?」
「たまり醤油は刺身専用?」
「白醤油と白だしは同じもの?」
「メーカーによって味はどのくらい違う?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
実は、日本農林規格(JAS)では醤油を、
濃口・薄口・たまり・再仕込み・白
の5種類に分類しています。農林水産省の2025年の資料でも、この5分類が改めて示されています。(農林水産省)
今回は、醤油の5種類の違いを比較しながら、キッコーマン、ヤマサ醤油、ヒガシマル醤油、イチビキなどの代表的なメーカーや、その歴史についても紹介します。
醤油はなぜ5種類に分かれる?

醤油の基本的な原料は、
- 大豆
- 小麦
- 食塩
です。
大豆と小麦から麹を作り、食塩水を加えて「もろみ」にし、発酵・熟成させたものを搾って醤油が作られます。
しかし、大豆と小麦の割合、食塩の量、熟成期間、仕込み方法などを変えることで、色・香り・旨味が大きく変化します。(農林水産省)
その違いによって、醤油は5種類に分類されているのです。
醤油5種類の違いを一覧で比較
まずは全体像を見てみましょう。
| 種類 | 色 | 味・香り | 主な特徴 | おすすめ料理 |
|---|---|---|---|---|
| 濃口醤油 | 濃い | 香り・旨味・塩味のバランス | 最も一般的 | 煮物、炒め物、刺身など |
| 薄口醤油 | 淡い | 風味が穏やか | 素材の色を生かせる | 吸い物、うどん、煮物 |
| たまり醤油 | 非常に濃い | 旨味が濃厚 | 大豆の割合が多い | 刺身、照り焼き、せんべい |
| 再仕込み醤油 | 濃い | 濃厚でまろやか | 醤油でもう一度仕込む | 刺身、寿司、冷奴 |
| 白醤油 | 非常に淡い | 甘味・香りが繊細 | 小麦の割合が多い | 吸い物、茶碗蒸し、卵焼き |
順番に詳しく見てみましょう。
濃口醤油|全国で最も一般的な万能タイプ
日本で最も使われているのが**濃口醤油(こいくちしょうゆ)**です。
農林水産省の資料では、濃口醤油が国内生産量のおよそ85%を占めるとされています。(農林水産省)
一般的には大豆と小麦をほぼ同量使用します。
醤油らしい、
色・香り・旨味・塩味
のバランスに優れています。
そのため、
- 刺身
- 冷奴
- 煮物
- 炒め物
- 焼き物
- つけ醤油
など、ほぼ何にでも使えます。
代表メーカー① キッコーマン
濃口醤油を代表する企業の一つがキッコーマンです。
キッコーマンの醤油づくりの歴史は江戸時代初期までさかのぼります。
千葉県野田市は、大豆や小麦などの原料を確保しやすいうえ、江戸川の水運を使って江戸へ大量の醤油を運べるという地理的な強みがありました。
1917年には、野田の醤油醸造家一族が合同して「野田醤油株式会社」を設立。これが現在のキッコーマンにつながっています。(キッコーマン)
つまりキッコーマンの成長には、
江戸という巨大市場+野田の醸造文化+水運
が大きく関係していたのです。
代表メーカー② ヤマサ醤油
もう一つの代表格がヤマサ醤油です。
ヤマサ醤油は千葉県銚子市を本拠地とし、創業は1645年。
380年以上の歴史を持つ老舗企業です。(ヤマサ)
銚子も野田と同じく関東の醤油産地として発展しました。
江戸時代末期には品質の高さが認められ、「最上醤油」とされた歴史もあります。(ヤマサ)
関東の濃口醤油を考えるうえでは、
野田のキッコーマン
と
銚子のヤマサ
という2つの老舗企業は非常に重要な存在です。
薄口醤油|関西料理を支えてきた醤油
薄口醤油(うすくちしょうゆ)は、主に関西で発達した醤油です。
「薄口」という名前から、
「塩分が少ない醤油」
と思われることがあります。
しかし、これは大きな誤解です。
薄口とは色が薄いという意味であり、必ずしも塩分が少ないわけではありません。
むしろ色を淡く仕上げるため、一般的な濃口醤油より食塩を多く使用する製法があります。(農林水産省)
薄口醤油が向いている料理
最大の特徴は、料理の色を濃くしすぎないことです。
そのため、
- お吸い物
- うどん
- 炊き込みご飯
- 茶碗蒸し
- 野菜の煮物
- だし巻き卵
などに適しています。
素材やだしの色を残しながら味を付けられるため、関西のだし文化と非常に相性が良い醤油です。
代表メーカー|ヒガシマル醤油
薄口醤油の代表メーカーといえば、兵庫県たつの市のヒガシマル醤油です。
同社の創業は天正年間、1580年頃までさかのぼります。(ヒガシマル)
現在の会社は1942年に淺井醤油と菊一醤油が合併して設立されました。(ヒガシマル)
龍野は淡口醤油発祥の地として知られています。
ヒガシマル醤油自身も、淡口醤油が「素材の持ち味を生かすために開発された醤油」で、だしとともに和食を支えてきたと説明しています。(ヒガシマル)
400年以上の歴史を持つ醤油文化が、現代の関西料理にも受け継がれているのです。
たまり醤油|大豆の旨味を強く感じる東海地方の醤油
たまり醤油は、主に愛知・岐阜・三重など東海地方で発達しました。
最大の特徴は大豆の使用割合が非常に高いことです。
濃口醤油では大豆と小麦をほぼ同量使うのが一般的ですが、たまり醤油は大豆を中心に作り、小麦は少量、あるいは使用しない場合もあります。(農林水産省)
そのため、
- 旨味が強い
- 色が濃い
- とろみがある
- 独特の香りがある
という特徴があります。
たまり醤油に向いている料理
たまり醤油は、
刺身や寿司
との相性が抜群です。
また、色と照りが出やすいため、
- 照り焼き
- 佃煮
- せんべい
- 焼きおにぎり
などにも使われます。
代表メーカー|イチビキ
東海地方のたまり醤油を代表する企業の一つがイチビキです。
創業は1772年(安永元年)。
愛知県豊橋市で味噌とたまり醤油の醸造を始めました。(イチビキ 公式サイト)
イチビキは現在も、豆味噌やたまり醤油など東海地方独特の食文化を支えるメーカーとして知られています。
ちなみに「イチビキ」という社名は、大豆の荷印として使っていた「一」に由来するとされています。(イチビキ 公式サイト)
醤油だけでなく、名古屋の赤味噌・豆味噌文化を考えるうえでも興味深い企業です。
再仕込み醤油|醤油でもう一度醤油を仕込む贅沢な製法
5種類の中で少し分かりにくいのが、
再仕込み醤油(さいしこみしょうゆ)
です。
一般的な醤油は、醤油麹に食塩水を加えて仕込みます。
ところが再仕込み醤油では、食塩水の代わりに生揚げ醤油を使ってもう一度仕込みます。(農林水産省)
簡単に言えば、
醤油を使って、さらに醤油を造る
ような製法です。
手間がかかる分、
- 色が濃い
- 旨味が強い
- 香りが豊か
- 味がまろやか
という特徴があります。
発祥は山口県
農林水産省によると、再仕込み醤油は山口県が発祥とされ、現在も山陰から北九州にかけて多く造られています。(農林水産省)
そのまま味わう用途に向いているため、
- 刺身
- 寿司
- 冷奴
- 漬物
などにおすすめです。
濃口醤油よりも濃厚な醤油を求める人には、一度試してみる価値があります。
白醤油|小麦を主体に造る最も色の淡い醤油
最後が白醤油です。
5種類の中で最も色が淡い醤油です。
白醤油は愛知県の西三河地方を中心に発達しました。(農林水産省)
一般的な醤油との最大の違いは、原料の割合です。
通常の濃口醤油は大豆と小麦をほぼ同量使うのに対して、白醤油では小麦の割合が非常に高くなります。
代表メーカー|ヤマシン醸造
白醤油の老舗メーカーとして知られるのが、愛知県碧南市のヤマシン醸造です。
同社の白醤油では、
小麦90%・大豆10%
という割合で原料を使用しています。
小麦を多くすることで、非常に淡い色の醤油になります。(ヤマシン醸造株式会社)
白醤油は、
- お吸い物
- 茶碗蒸し
- 卵焼き
- うどん
- 炊き込みご飯
など、素材の色をほとんど変えたくない料理に適しています。
白醤油と白だしは違う
ここは混同されやすいポイントです。
白醤油=醤油
ですが、
白だし=白醤油や薄口醤油などに、だしや調味料を加えたもの
です。
そのため、白だしを醤油と同じ感覚で大量に使うと味が濃くなりすぎることがあります。
濃口・薄口・たまり・再仕込み・白醤油をどう使い分ける?
家庭での選び方をシンプルに整理すると、次のようになります。
1本だけ買うなら「濃口醤油」
ほぼすべての料理に対応できるため、家庭の基本となる醤油です。
だし料理が多いなら「薄口醤油」
お吸い物、うどん、茶碗蒸しなどをよく作る家庭には向いています。
刺身をもっと濃厚に味わいたいなら「たまり・再仕込み」
どちらも旨味が強く、卓上醤油として楽しめます。
たまりは大豆由来の濃厚さ、再仕込みは熟成した醤油のまろやかさが魅力です。
料理の色をきれいに残したいなら「白醤油」
料理人が使うイメージの強い醤油ですが、家庭料理でも使えます。
地域によって醤油文化が違うのも面白い
醤油を調べていくと、単なる調味料ではなく、日本の地域文化そのものが見えてきます。
大まかには、
関東:濃口醤油
関西:薄口醤油
東海:たまり醤油
山口・山陰・北九州:再仕込み醤油
愛知・西三河:白醤油
という特徴があります。
もちろん現在では全国どこでもさまざまな醤油が使われていますが、こうした地域差の背景には、その土地の料理や原料、物流、歴史があります。
キッコーマンが発展した千葉県野田では、江戸川を利用して江戸に醤油を供給できました。
ヒガシマル醤油のある龍野では、だしと素材の色を重視する関西料理と淡口醤油が結びつきました。
イチビキのある東海地方では、豆味噌とともに大豆の旨味を生かしたたまり醤油文化が育っています。
醤油メーカーの歴史を知ると、
「なぜその地域では、その醤油が使われるようになったのか」
まで見えてくるのです。
代表メーカーを比較
| メーカー | 主な地域 | 創業・ルーツ | 得意な醤油 |
|---|---|---|---|
| キッコーマン | 千葉県野田 | 江戸初期~、会社設立1917年 | 濃口 |
| ヤマサ醤油 | 千葉県銚子 | 1645年 | 濃口 |
| ヒガシマル醤油 | 兵庫県たつの | 1580年頃 | 薄口 |
| イチビキ | 愛知県 | 1772年 | たまり |
| ヤマシン醸造 | 愛知県碧南 | 江戸時代から続く老舗 | 白醤油 |
こうして見ると、日本を代表する醤油メーカーには数百年単位の歴史を持つ企業が非常に多いことが分かります。
発酵食品は地域の食文化と強く結びつくため、長期間にわたってブランドや技術が受け継がれやすい点も興味深いところです。
まとめ|醤油は料理によって使い分けるともっと面白い
普段何気なく使っている醤油ですが、JASでは、
濃口・薄口・たまり・再仕込み・白
の5種類に分類されています。
それぞれの特徴を簡単にまとめると、
濃口=万能型
薄口=素材の色とだしを生かす
たまり=大豆の濃厚な旨味
再仕込み=濃厚でまろやかな味
白=料理の色をほとんど変えない
という違いがあります。
そして醤油の面白さは、味の違いだけではありません。
キッコーマンの野田、ヤマサ醤油の銚子、ヒガシマル醤油の龍野、イチビキの東海地方など、それぞれの醤油には地域の歴史と食文化が深く関係しています。
いつも濃口醤油だけを使っている方も、
刺身にはたまりや再仕込み、
吸い物には薄口、
卵料理には白醤油、
と使い分けてみると、同じ料理でも味や見た目が大きく変わります。
スーパーで醤油を選ぶ際には、メーカーだけでなく、ぜひラベルに書かれている**「醤油の種類」**にも注目してみてはいかがでしょうか。
それでは、ありがとうございました!

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