銀行や信用金庫、保険会社などは、たくさんの国債や社債を持っています。
こうした債券は、金利が上がると価格が下がりやすくなります。
そのため金融機関では、
「金利が上がったとき、どのくらい損失が出るのか」
をあらかじめ測っておく必要があります。
そのときによく使われるのが、
BPV(ベーシス・ポイント・バリュー)
という考え方です。
BPVとは、簡単にいえば、
「金利がほんの少し動いたとき、債券の値段が何円動くのか」
を見る数字です。
この記事では、BPVを使って債券ポートフォリオの金利リスクを管理する方法と、債券を入れ替える意味について、中学生でもイメージできるように解説します。
1.まず「デュレーション」と「BPV」は何が違う?

債券の金利リスクを考えるときによく使われるのが「デュレーション」です。
デュレーションは簡単にいうと、
「金利が動いたとき、この債券の価格がどのくらい動きやすいか」
を見る指標です。
一般的には、満期までの期間が長い債券ほど、金利の影響を大きく受けます。
例えば、
5年債
10年債
30年債
では、通常30年債の方が金利が上がったときの値下がりが大きくなります。
一方、BPVは、
価格が何%動くかではなく、実際に何円動くのか
を確認する数字です。
そのため、金融機関ではBPVの方が実際の損失額をイメージしやすくなります。
2.BPVを簡単な例で考えてみよう
例えば、ある債券を10億円持っているとします。
この債券のBPVが50万円だったとしましょう。
これは、
金利が0.01%上昇すると、およそ50万円価格が下がる
という意味です。
では、金利が0.10%上昇したらどうなるでしょうか。
0.10%は0.01%の10倍なので、
50万円 × 10 = 500万円
程度の値下がりが想定されます。
つまりBPVを見ることで、
「金利がこれくらい上がったら、どのくらい損する可能性があるのか」
を金額で考えやすくなるわけです。
3.なぜ平均デュレーションだけでは足りないの?
ここが重要なポイントです。
金利は、
「全部の期間で同じだけ上がる」
とは限りません。
例えば、
5年の金利はあまり上がらない
10年の金利は少し上がる
20年や30年の金利だけ大きく上がる
といったことがあります。
このように、年限ごとに金利の動きが違うことを、
イールドカーブが変化する
といいます。
そのため、
「ポートフォリオ全体の平均デュレーションは5年だから大丈夫」
と考えていても、
20年債や30年債に大きなリスクが集中していれば、長期金利だけが上昇したときに大きな損失が発生する可能性があります。
そこで必要になるのが、
年限ごとにBPVを見る方法
です。
4.年限ごとのBPVとは?
例えば金融機関が持っている債券を、
1年
3年
5年
10年
20年
30年
などに分けて考えます。
そして、それぞれについて、
「金利が0.01%動いたら何円動くのか」
を計算します。
例えば、
5年ゾーンのBPV=50万円
10年ゾーンのBPV=100万円
20年ゾーンのBPV=200万円
30年ゾーンのBPV=300万円
だったとします。
この場合、
20年や30年の長期金利が動いたときの影響が大きい
ことが分かります。
つまり、
「金利リスクがどこに集中しているか」
を見つけることができるわけです。
5.そこで行うのが「銘柄入替」
もし20年債や30年債のBPVが大きすぎると判断したら、
長期債を一部売却し、
5年債や10年債など、期間の短い債券へ乗り換える方法があります。
これを、
銘柄入替
あるいは
ポートフォリオのメンテナンス
と呼びます。
簡単にいうと、
「金利が上がったときに値下がりしやすい債券を減らして、値下がりしにくい債券へ入れ替える」
ということです。
6.長い債券から短い債券へ入れ替えるとどうなる?
例えば、
20年債のBPVが150万円
5年債のBPVが50万円
で、
合計BPVが200万円
だったとします。
ここで20年債を一部売って、そのお金で5年債を買ったとします。
すると、
20年債のBPVが80万円
5年債のBPVが70万円
となり、
合計BPVは150万円
になります。
つまり、
200万円
↓
150万円
となり、
金利リスクを25%減らすことができた
と考えられます。
7.なぜ全部を短期債にしないの?
ここで、
「それなら全部短期債にすれば安全なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、そう簡単ではありません。
一般的には、長期債の方が短期債より利回りが高いことがあります。
つまり長期債を売って短期債へ移すと、
受け取れる利息が減ってしまう可能性
があります。
例えば、
20年債の利回りが2.5%
5年債の利回りが1.5%
だった場合、
長期債を売って短期債へ移すことで、金利リスクは小さくできます。
しかし、その代わり、
毎年受け取れる利息が減る
可能性があります。
金融機関は、
「安全性」
と
「収益性」
の両方を考えなければならないのです。
8.特定の年限だけ減らす方法もある
債券の入れ替えは、
「長期債を全部減らす」
だけではありません。
例えば、
「20年より先の金利が特に上がりそうだ」
と考えた場合、
20年・30年債を減らし、
5年・7年・10年債へ移す
という方法もあります。
これによって、
ポートフォリオ全体の残高をあまり変えずに、危ないと考える年限だけリスクを減らす
ことができます。
ただし、この方法には注意点があります。
予想に反して、
5年金利の方が大きく上昇した
となれば、期待した効果が得られない可能性があります。
つまり、
「どの年限の金利が上がるか」という予想が外れるリスク
があるわけです。
9.債券を入れ替える前に何を確認する?
金融機関では、いきなり債券を売却するのではなく、通常は事前にシミュレーションを行います。
まず確認するのが、
現在どの年限にBPVが集中しているか
です。
次に、
「この債券を50億円売ったらどうなるか」
「その代わりに5年債を50億円買ったらどうなるか」
などを計算します。
そして、
入れ替え前のBPV
と
入れ替え後のBPV
を比較します。
これによって、
実際にどのくらい金利リスクを減らせるのか
を確認します。
10.含み損がある債券を売る問題
ここでもう一つ大きな問題があります。
低金利の時代に買った長期債は、現在大きな含み損を抱えていることがあります。
例えば、
100億円で買った債券が
現在90億円
になっていたとします。
この債券を売れば、
10億円の売却損
が発生します。
そのため、
「リスクを減らしたいけれど、売却損は出したくない」
という問題が起こります。
これが金融機関の債券運用で非常に難しいところです。
11.「売却損」と「将来のメリット」を比べる
債券を入れ替えるときは、
今回いくら損するのか
だけを見るのではありません。
例えば、
売却損が1億円
発生したとしても、
新しい債券へ入れ替えることで
毎年3,000万円収益が増える
とします。
単純化すると、
1億円 ÷ 3,000万円
で、
約3年強で売却損を取り戻せる可能性があります。
こうした考え方を、
回収期間
といいます。
つまり、
「今、損失を出して入れ替えることで、何年後に取り戻せるのか」
を見るわけです。
12.金利上昇時の損失がどれだけ減るかも重要
もう一つ確認しなければならないのが、
将来の金利上昇時にどのくらい損失を減らせるか
です。
例えば、
何もしなければ
金利が1%上昇したときに10億円の損失
が出るとします。
一方、債券を入れ替えることで、
同じ金利上昇でも損失が7億円
になったとします。
すると、
3億円分の金利リスクを減らした
ことになります。
これも銘柄入替の大きなメリットです。
13.BPVを下げながら利息を維持する方法も考える
単純に長期国債を短期国債へ入れ替えるだけでは、受取利息が減ってしまうことがあります。
そこで、
社債
変動利付債
高い利回りの新発債
などを組み合わせることも考えられます。
例えば、
低利回りの20年国債を売却し、
期間の短い社債へ入れ替える
ことで、
金利リスクを小さくしながら、一定の利回りを確保できる場合があります。
ただし、社債には企業の信用リスクがあります。
そのため、
金利リスクを減らす代わりに、別のリスクを増やしていないか
を確認することも大切です。
14.ALMでは「どこにリスクがあるか」を見る
ALMでは、
「債券を何億円持っているか」
だけを見るのではありません。
重要なのは、
どの年限に、どのくらいの金利リスクが集中しているか
を見ることです。
例えば、
10年債は少ない
20年債は多い
30年債も多い
というポートフォリオなら、
長期金利上昇に弱い可能性があります。
そこで、
グリッド別BPVを使い、
「20年ゾーンを減らそう」
「30年ゾーンを半分にしよう」
といった形でリスクを調整していきます。
これが、より細かいALM管理です。
まとめ|BPVを見ると「どこが危ないか」が分かる
債券の金利リスクを見るとき、
平均デュレーションだけでは分からないことがあります。
なぜなら、
5年金利、10年金利、20年金利、30年金利が同じように動くとは限らないから
です。
そこで重要になるのが、
年限ごとのBPV
です。
BPVを見ることで、
「20年債のリスクが大きい」
「30年債に金利リスクが集中している」
といったことが分かります。
そして、リスクが大きすぎる年限の債券を売り、
より短い債券などへ入れ替えることで、
金利上昇時の損失を小さくする
ことができます。
ただし、債券を入れ替えれば、
売却損
受取利息の減少
信用リスクの増加
など、別の問題が発生する可能性があります。
そのため金融機関では、
「BPVがどれだけ減るか」
だけでなく、
「売却損はいくらか」「将来の利息はいくら増減するか」「何年で損失を回収できるか」
まで一緒に確認することが重要です。
金利のある時代の債券運用では、
単に債券を持ち続けるのではなく、金利リスクの場所を見ながら定期的にポートフォリオを入れ替えていくこと
が、ALM管理の重要なポイントになります。
それでは、ありがとうございました!

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