銀行・信用金庫は金利上昇で儲かるのか?貸出・預金・有価証券運用への影響を解説

「金利が上がると銀行は儲かる」と聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

日本では長期間にわたって超低金利が続いてきましたが、日本銀行による金融政策の正常化が進み、金融機関を取り巻く環境は大きく変化しています。

2026年9月2日時点では、日本銀行は無担保コールレート翌日物を「1.0%程度」で推移するよう促しています。(日本ボート協会)

金利のある世界が戻ってきたことで、

「銀行はこれから儲かるのでは?」
「信用金庫の収益も改善する?」
「預金金利が上がったら逆に銀行の負担になるのでは?」

と疑問に思う人もいるでしょう。

結論からいうと、金利上昇は中長期的には銀行・信用金庫の収益改善につながりやすいものの、すべての金融機関が一律に儲かるわけではありません。

ポイントになるのが、

  • 貸出金利
  • 預金金利
  • 有価証券運用
  • 保有債券の評価損
  • 信用コスト

です。

今回は、金利上昇が銀行や信用金庫の収益にどのような影響を与えるのか、金融機関の収益構造からわかりやすく解説します。

目次

金利上昇で銀行・信用金庫は本当に儲かる?

銀行や信用金庫の代表的な収益源は「資金利益」です。

簡単にいえば、

貸出や有価証券運用で受け取る利息-預金などに支払う利息

が金融機関の利益になります。

例えば、預金者から年0.2%でお金を預かり、企業などへ年1.5%で融資すれば、その金利差が金融機関の収益源になります。

これを一般的に「利ざや」と呼びます。

そのため市場金利が上昇して、

貸出金利が1.5%から2.0%へ上昇する一方、預金金利が0.2%から0.4%へ上昇した場合、単純計算では利ざやは拡大します。

このため、一般的には金利上昇は銀行や信用金庫にとって追い風と考えられています。

日本銀行も、貸出金利の上昇幅が預金金利の上昇幅を上回る傾向があることから、金利上昇はやや長い目で見れば金融機関収益を押し上げると分析しています。(日本ボート協会)

①貸出金利上昇は銀行収益にプラス

まず大きなメリットになるのが「貸出金利の上昇」です。

銀行や信用金庫は、

住宅ローン
事業性融資
不動産融資
カードローン
地方公共団体向け融資

などによって利息収入を得ています。

市場金利が上昇すると、短期プライムレートや市場金利などを基準として貸出金利も徐々に上昇します。

日本銀行によると、金利上昇局面では新規貸出の約定金利について、短期・長期ともに上昇する動きが確認されています。(日本ボート協会)

例えば、1,000億円を平均金利1%で貸し出している金融機関の場合、年間の貸出利息は単純計算で約10億円です。

平均貸出金利が1.5%になれば、同じ1,000億円でも年間約15億円となります。

貸出残高が変わらなければ、約5億円の利息収入増加となる計算です。

もちろん実際にはすべての貸出金利が一度に変更されるわけではありません。

固定金利融資もあれば、変動金利融資もあり、金利改定時期も契約によって異なります。

そのため政策金利が上昇したからといって、翌日から金融機関の利益が急増するわけではありません。

しかし時間の経過とともに貸出金利が上昇すれば、資金利益を押し上げる効果が期待できます。

②預金金利上昇は金融機関にとってコスト

一方、金利上昇にはマイナス要因もあります。

代表的なのが「預金金利」です。

銀行や信用金庫にとって預金は顧客から調達している資金です。

普通預金や定期預金の金利が上昇すれば、預金者へ支払う利息も増えます。

つまり、

貸出金利上昇=収入増
預金金利上昇=費用増

という関係になります。

重要なのは「どちらが速く、どれだけ上昇するか」です。

貸出金利が大きく上昇し、預金金利の上昇が緩やかであれば利ざやは拡大します。

反対に、預金獲得競争によって預金金利を大幅に引き上げなければならない金融機関では、期待したほど収益が増えない可能性があります。

現在はインターネット銀行などが高い預金金利を提示するケースもあり、銀行・信用金庫にとって「預金をいかに維持するか」も重要な経営課題になっています。

つまり金利上昇局面では、単純な貸出金利だけでなく、

預金金利をどの程度引き上げる必要があるか

も金融機関の収益を左右します。

③有価証券運用は長期的には収益改善が期待できる

銀行や信用金庫は、集めた預金のすべてを企業や個人に貸し出しているわけではありません。

余った資金の一部を、

国債
地方債
社債
外国債券
株式
投資信託

などで運用しています。

特に預金量に対して貸出需要が少ない金融機関では、有価証券運用は重要な収益源です。

金利が上昇すると、新しく購入する債券の利回りも高くなります。

例えば、以前は利回り0.5%程度の債券しか購入できなかった金融機関が、金利上昇によって1%や2%の債券を購入できるようになれば、将来的な利息収入は増加します。

したがって、中長期的には金利上昇が有価証券運用の収益改善につながる可能性があります。

ただし、ここには非常に重要な落とし穴があります。

④金利上昇で既存債券には「評価損」が発生する

金利上昇局面で金融機関が注意しなければならないのが、保有債券の価格下落です。

債券価格と金利は基本的に逆方向へ動きます。

例えば年0.5%の国債を保有していたところ、市場では年2%の国債が購入できるようになったとします。

投資家からすれば、わざわざ0.5%しか利息を受け取れない国債を同じ価格で買う必要はありません。

そのため既存の低金利債券の市場価格は下落します。

結果として金融機関の保有債券に「評価損」が発生します。

2026年4月の日本銀行「金融システムレポート」でも、既往の金利上昇によって円債の評価損が拡大していることが指摘されています。(日本ボート協会)

したがって、金利上昇による金融機関への影響は、

短期的には
「保有債券価格下落による評価損」

長期的には
「新しい高利回り債券への入れ替えによる利息収入増加」

という二つの面から考える必要があります。

銀行と信用金庫では金利上昇の影響が違う?

銀行と信用金庫でも影響は必ずしも同じではありません。

大手銀行は企業向け融資だけでなく、海外融資、投資銀行業務、手数料ビジネスなど収益源が多様です。

一方、地域銀行や信用金庫では地域の中小企業融資や住宅ローン、預金、有価証券運用などの比重が比較的大きくなります。

そのため、

「貸出金利をどの程度上げられるか」
「預金金利をどこまで上げる必要があるか」
「低金利時代に購入した債券をどの程度保有しているか」

などによって金融機関ごとの差が大きくなります。

実際、日本銀行が2026年7月に公表した「2025年度の銀行・信用金庫決算」では、円金利上昇などを背景に、基礎的収益力を示すコア業務純益は大手行・地域銀行・信用金庫のすべてで増益となりました。(日本ボート協会)

一方で最終的な当期純利益を見ると、大手行と地域銀行は増益だったものの、信用金庫は減益でした

その要因の一つとして、円金利上昇を受けた債券売却損が利益を押し下げたことが挙げられています。(日本ボート協会)

この結果からも、

「金利上昇=金融機関なら必ず増益」ではない

ことが分かります。

金利上昇には信用コスト増加のリスクもある

もう一つ忘れてはいけないのが「信用コスト」です。

金利が上昇すると銀行の貸出金利も上がりますが、それは借りている企業や家計にとっては利払い負担の増加を意味します。

例えば企業の借入金が10億円あり、

借入金利1%なら年間利息は約1,000万円ですが、

2%になれば約2,000万円です。

業績の良い企業なら問題ありませんが、もともと利益が少ない企業では利払い負担が経営を圧迫する可能性があります。

倒産や貸倒れが増えれば、金融機関は貸倒引当金などを積み増す必要があり、信用コストが増加します。

つまり、

金利上昇

貸出金利上昇

銀行の利息収入増加

一方で企業の返済負担増加

倒産・延滞増加

銀行の信用コスト増加

というリスクもあります。

金利上昇が速すぎれば、金融機関にとって必ずしもメリットばかりではありません。

金利上昇で銀行・信用金庫の利益を見る5つのポイント

今後、銀行や信用金庫の決算を見るときには、「政策金利が何%になったか」だけで判断しないことが重要です。

特に確認したいのは次の5項目です。

①貸出金利がどの程度上昇しているか

②預金金利がどの程度上昇しているか

③貸出金利と預金金利の差である「預貸金利ざや」が拡大しているか

④保有する国債・地方債などにどの程度の評価損があるか

⑤企業倒産などによって信用コストが増えていないか

さらに地域金融機関を見る場合は、

預貸率

にも注目したいところです。

預金が多くても貸出が少ない金融機関は、その余剰資金を有価証券で運用する割合が高くなることがあります。

その場合、貸出金利上昇による恩恵よりも、債券価格下落による影響が大きくなる可能性があります。

逆に、貸出需要が旺盛で変動金利貸出の割合が高い金融機関では、金利上昇による利ざや改善の恩恵を受けやすくなるでしょう。

まとめ|金利上昇は銀行に追い風だが「必ず儲かる」わけではない

金利上昇は、銀行・信用金庫にとって基本的には収益改善につながりやすい環境です。

特に長い低金利時代には貸出金利が低下し続け、金融機関は利ざや縮小に苦しんできました。

金利が正常化すれば、

貸出金利の上昇
有価証券利回りの上昇
運用収益の改善

などによって、金融機関本来の「預金を集め、貸出や運用によって利益を得る」というビジネスモデルが機能しやすくなります。

実際、日本銀行も2026年4月時点で、円金利上昇などを背景として金融機関のコア業務純益の改善が続いているとしています。(日本ボート協会)

ただし金利上昇には、

預金金利の上昇
債券価格下落
有価証券評価損
企業の利払い負担増加
信用コスト増加

というマイナス面もあります。

したがって、

「金利が上がったから銀行は儲かる」

と単純に考えるのではなく、

貸出・預金・有価証券運用の3つをセットで見ること

が重要です。

今後、銀行株や地域金融機関の業績を分析するときにも、「政策金利」だけを見るのではなく、預貸金利ざや、有価証券評価損益、信用コストまで確認すると、その金融機関が本当に金利上昇の恩恵を受けているのかが見えやすくなるでしょう。

それでは、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

金融・不動産・年金・リスク管理分野を専門とし、FP技能士1級、宅地建物取引士、管理業務主任者、貸金業務取扱主任者など多数の国家資格・金融資格を保有。

銀行業務検定では財務・法務・税務・年金・融資管理・金融リスクマネジメント等に合格し、近年はDX、生成AI、サイバーセキュリティ、サステナビリティ領域にも知見を広げている。

「難しい制度を、誰でも理解できる言葉で伝える」をテーマに、資産防衛・老後対策・金融リテラシー向上に関する情報発信を行っている。

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