親の口座が凍結される前に!家族で話し合っておきたい生前対策と信託の基礎知識

「親が物忘れをするようになってきたけれど、もし認知症になったら銀行口座はどうなるの?」

「医療費や介護費用を払いたいのに、親のお金が引き出せなくなったら困る……」

親が高齢になると、避けて通れないのが「認知症による資産(口座)凍結」のリスクです。

親が認知症になり判断能力が低下すると、銀行口座は凍結され、たとえ家族であっても原則として預金の引き出しや定期預金の解約ができなくなってしまいます。

この記事では、親の口座が凍結された場合のリスクから、今注目の生前対策「家族信託」の基礎知識、成年後見制度との違い、家族会議のスムーズな始め方まで分かりやすく解説します!

目次

1. なぜ起こる?認知症による「口座凍結」の仕組みと実害

銀行は、口座名義人本人の判断能力が低下したことを知ると、詐欺被害や親族間のトラブルを防ぐために口座を凍結します。

口座が凍結されるとどうなる?

口座が凍結されると、以下のような取引ができなくなります。

  • 預金の引き出し、振り込み
  • 定期預金の解約
  • 医療費や介護施設への入居一時金の支払い
  • 実家(不動産)の売却(介護資金を作るための売却も不可)

子ども世代にかかる重い負担

口座が凍結されると、親の介護費用や入院費を「子どもの自腹(立て替え)」で支払わなければならなくなります。

「親のお金があるのに使えない」状態になり、子どもの家計に直接大きな負担が押し寄せてしまいます。

2. 口座凍結を防ぐ決定打!「家族信託」の基礎知識

親が元気なうちに準備できる最も有効な対策の一つが「家族信託」です。

家族信託とは?

家族信託とは、「自分の財産(預金や不動産)の管理・処分権限を、信頼できる家族(子どもなど)に託す契約」のことです。

  • 委託者(財産を託す人):親
  • 受託者(財産を管理する人):子ども
  • 受益者(利益を得る人):親

例えば、父親(親)が息子(子)と家族信託契約を結んで専用の信託口座にお金を移しておくと、父親が認知症になった後でも、息子が自分の判断で信託口座からお金を引き出し、父親の介護費用の支払いに充てることができるようになります。

家族信託の3つの大きなメリット

  1. 親が認知症になっても口座凍結を防げる
    あらかじめ子どもに管理権限を移しているため、生活費や介護費用を止めることなくスムーズに支払えます。
  2. 実家の売却や管理が子どもの判断で可能になる
    親が施設に入居した後、誰も住まなくなった実家を子どもの権限で売却し、介護資金に充てることができます。
  3. 裁判所の関与がなく、家族間で柔軟に運用できる
    家庭裁判所への定期的な報告などの手間がかからず、家族の事情に合わせた管理が可能です。

3. 「成年後見制度」と「家族信託」の違い比較

「認知症対策なら成年後見制度でもいいのでは?」と思う方も多いはずです。しかし、この2つには大きな違いがあります。

比較項目家族信託成年後見制度(法定後見)
始めるタイミング親が元気なうち(判断能力があるうち)認知症が進んだ後(凍結後)
財産管理をする人家族(子どもなど)弁護士・司法書士などの専門家が多い(約8割)
費用初期費用(契約作成費など)のみ月額報酬(約2万〜6万円)がずっと発生
財産の運用・売却家族の判断で柔軟に可能(実家の売却など)制限が非常に厳しく、財産の積極運用や売却は難易度が高い

すでに認知症が重度に進行してしまった場合は「成年後見制度」を使うしかありませんが、選任された専門家に毎月の報酬が発生し続けるなどのデメリットもあります。

そのため、親が元気なうちに「家族信託」を組んでおく方が、費用面でも自由度でも圧倒的に有利です。

4. 親が元気なうちに切り出そう!家族会議の進め方ステップ

生前対策で最も難しいのが「親への話の切り出し方」です。いきなり「家族信託しよう」と言うと、「親を認知症扱いしている」と反発されることもあります。

以下のステップで自然に話題を切り出してみましょう。

STEP 1:「他人のニュースや事例」をきっかけにする

「〇〇さんの家で、親が倒れた時に口座が使えなくて困ったらしいよ」など、第三者の話題やニュース、テレビ番組をきっかけにして、「うちはどうしておく?」と問いかけてみるのが効果的です。

STEP 2:「親の希望(どう暮らしたいか)」を中心に聞く

お金の話から入るのではなく、「将来どんな施設に入りたいか」「万が一の時、医療費や介護費はどうやって払ってほしいか」など、親の希望を叶えるための手段としてお金の管理の話につなげます。

STEP 3:司法書士などの専門家を交えて話し合う

家族間だけでお金の話をすると、兄弟姉妹の間で不審感や紛争が生まれることもあります。第三者である司法書士や行政書士などの専門家に間に入ってもらい、客観的なアドバイスを受けるのが一番の近道です。

まとめ:家族信託ができるのは「親が元気な今だけ」

親の口座凍結対策で最も大切なことは、「認知症になってからでは遅い」ということです。

家族信託をはじめとする生前対策は、親にしっかりとした意思能力・判断能力があるうちにしか契約できません。

  1. 重い認知症になると口座が凍結され、介護費の立て替えが発生する
  2. 「家族信託」なら、親の認知症後も子どもが柔軟に口座や実家を管理できる
  3. 判断能力がある今のうちに、家族会議や専門家への相談をスタートする

「物忘れが増えてきたかも……」と感じたら、それが対策を始める合図です。親と家族の未来の安心のために、まずは一度話し合う機会を作ってみませんか?

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この記事を書いた人

金融・不動産・年金・リスク管理分野を専門とし、FP技能士1級、宅地建物取引士、管理業務主任者、貸金業務取扱主任者など多数の国家資格・金融資格を保有。

銀行業務検定では財務・法務・税務・年金・融資管理・金融リスクマネジメント等に合格し、近年はDX、生成AI、サイバーセキュリティ、サステナビリティ領域にも知見を広げている。

「難しい制度を、誰でも理解できる言葉で伝える」をテーマに、資産防衛・老後対策・金融リテラシー向上に関する情報発信を行っている。

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