日本人で初めて宇宙へ行った元TBS記者の秋山豊寛(あきやま・とよひろ)さんが、2026年8月26日に84歳で亡くなりました。
1990年12月、旧ソ連の宇宙船「ソユーズTM11号」に搭乗し、宇宙ステーション「ミール」に滞在。
日本人初の宇宙飛行という歴史的な足跡を残した人物です。(毎日新聞)
秋山さんの人生で改めて注目したいのが、若い頃から宇宙飛行士を目指していたわけではないという点です。
TBSの記者としてキャリアを積んだ後、40代後半になって宇宙飛行士候補となり、ロシア語などを一から学びながら訓練を受けました。そして宇宙飛行後も、会社員としての道だけにとどまらず、農業など新しい生き方を選択しています。(ICU Alumni)
人生100年時代と言われる現在、秋山さんの生き方は私たちにも大きなヒントを与えてくれます。
今回はファイナンシャルプランナー(FP)の視点から、**「40代・50代からの学び直し」「セカンドキャリア」「老後資金」**について考えてみます。
秋山豊寛さんは47歳から新しい挑戦を始めた

秋山豊寛さんは国際基督教大学(ICU)を卒業後、TBSに入社し、報道記者としてキャリアを積みました。
転機となったのが、TBSが進めた「宇宙特派員」のプロジェクトです。
秋山さんは40代後半で候補者となり、1989年からモスクワ近郊のガガーリン宇宙飛行士訓練センターで本格的な訓練を開始しました。
本人の回想では14カ月にわたる訓練を受けており、特に初めて学ぶロシア語への対応は大きな挑戦だったとされています。(ICU Alumni)
そして1990年12月2日、ソユーズTM11号で宇宙へ出発。JAXAも、秋山さんを**「日本人として初めて宇宙へ行った人」**としています。
ミールに6日間滞在し、日本人初の宇宙特派員として地球の映像などを伝えました。(JAXA 有人宇宙技術部門)
つまり重要なのは、「47歳で人生が完成していた」のではなく、40代後半からまったく新しい分野を学んだということです。
「学び直し」に年齢は関係ない
秋山さんのエピソードからFPとして注目したい一つ目のポイントが、学び直しは将来の資産になり得るということです。
40代、50代になると、
「今から新しいことを覚えても遅い」
「もう転職する年齢ではない」
「定年まで今の仕事を続ければいい」
と考えてしまいがちです。
しかし人生100年時代では、60歳や65歳で仕事人生が完全に終わるとは限りません。
秋山さんの場合、宇宙飛行のために専門訓練だけでなく、新しい言語や環境への対応も求められました。
もちろん、私たちが宇宙飛行士を目指す必要はありません。
例えば50代からでも、IT・AI、簿記、FP、宅建、語学、動画編集などを学べば、定年後の仕事や副業につながる可能性があります。
ここで重要なのは、学び直しを単なる「資格取得」で終わらせないことです。
「何を勉強するか」より、
学んだ知識をどう収入や仕事につなげるか
まで考えることが、人生後半のキャリア設計では重要になります。
老後対策は「貯める」だけではない
老後資金というと、
「いくら貯金すればいいのか」
「老後2,000万円必要なのか」
と金額ばかりを気にする人が少なくありません。
しかしFPとしては、老後対策を
①公的年金
②金融資産
③働いて得られる収入
の3本柱で考えることをおすすめします。
2026年度の老齢基礎年金の満額は、1956年4月2日以降生まれの場合、月額7万608円です。
また、厚生労働省が示す標準的な夫婦の年金額は月額23万7,279円となっています。
ただし、実際の受給額は加入期間や現役時代の収入によって大きく異なります。(厚生労働省)
そのため、
「年金だけで足りるか」ではなく「年金と自分の収入・資産をどう組み合わせるか」
を考えることが大切です。
50代からの「働ける力」は大きな老後資産になる
仮に65歳から毎月5万円の収入を10年間得られたとします。
単純計算なら、
5万円×12カ月×10年間=600万円
です。
毎月10万円なら10年間で1,200万円になります。
つまり、老後資金対策は必ずしも「現役時代に1,000万円多く貯金する」方法だけではありません。
65歳以降も月5万円、月10万円を稼げる能力を身につけることも、老後資金対策の一つなのです。
もちろん健康状態や家庭環境によって働き方は異なります。しかし、
「貯金を増やす」
だけでなく、
「長く働ける能力を増やす」
という視点を持つことで、老後設計の選択肢は広がります。
秋山豊寛さんは宇宙飛行後も人生を変えた
秋山さんの人生でもう一つ興味深いのが、宇宙飛行が人生のゴールではなかったことです。
宇宙から帰還した後、TBSを退社し、福島県で農業を始めるなど、テレビ記者とは異なる生活へ移っていきました。後年も農業を営みながら生活していたことが報じられています。(BS-TBS)
一般的な感覚では、
TBS記者 → 日本人初の宇宙飛行 → 農業
というキャリアはかなり異例でしょう。
しかし、人生100年時代では、むしろこうした複数のキャリアを持つ生き方が珍しくなくなる可能性があります。
「一つの会社に入り、定年まで働き、その後は年金生活」という一本道だけで人生設計を考える必要はありません。
FPが考える50代から準備したい3つのこと
では、40代・50代から何を準備すればよいのでしょうか。
第一は、年金額を把握することです。「ねんきんネット」などで自分の年金見込み額を確認し、老後の生活費との差額を把握します。
第二は、資産形成を続けることです。預貯金だけでなく、NISAやiDeCoなども選択肢になります。ただし、年齢・収入・住宅ローン・家族構成などによって適切な方法は異なり、「とにかく投資すればいい」というものではありません。
第三が、学び直しへの投資です。
例えば50万円を金融商品へ投資する方法もありますが、50万円を資格・ITスキル・専門知識などに使い、その結果として月5万円の収入を長期間得られるようになるのであれば、「人的資本への投資」として大きな意味を持つ場合があります。
金融庁の情報でも、老後のお金を考える出発点として、投資商品そのものではなく将来のライフプランを考える重要性が示されています。(金融庁)
「老後資金はいくら必要?」だけでは見えないもの
総務省の家計調査を見ると、世帯によって毎月の支出額には大きな違いがあります。全国平均の数字は参考になりますが、それだけで「自分に必要な老後資金」が決まるわけではありません。(総務省統計局)
住宅費がほとんどかからない人と、老後も家賃を払い続ける人では必要額が違います。
旅行を楽しみたい人と、地元中心で暮らす人でも違います。
そして、65歳以降も働く人と完全にリタイアする人でも大きく変わります。
だからこそFPとしては、
「老後資金○千万円を貯める」
という目標だけではなく、
「何歳まで、どんな仕事をし、どんな暮らしをしたいのか」
から逆算して資金計画を作ることをおすすめします。
まとめ|秋山豊寛さんの人生から「第二の人生」を考える
秋山豊寛さんは、TBS記者としてキャリアを重ねた40代後半から宇宙飛行という未知の世界へ挑戦しました。そして宇宙から戻った後も、農業など新しい生き方を選んでいます。
2026年8月26日、その84年の生涯を閉じましたが、日本人初の宇宙飛行という功績だけでなく、年齢に縛られず人生を変えていった姿も印象に残ります。(毎日新聞)
人生100年時代の老後対策は、預貯金や年金、NISAだけではありません。
「お金を貯める力」
「お金を運用する力」
「何歳になっても収入を得られる力」
この3つをバランスよく準備することが重要です。
47歳から新しい分野を学び始めた秋山さんの人生を見ると、50代から新しい勉強を始めても決して遅くないことを考えさせられます。
老後資金を考えるときこそ、「あといくら貯めればいいか」だけでなく、
「これから何を学び、どんな仕事をして、どんな人生を送りたいのか」
まで考えてみてはいかがでしょうか。
それでは、ありがとうございました!

コメント