タレントの鈴木蘭々さんが、母親の介護をきっかけに実家の片付けを進めてきたことが話題になっています。
母親の自宅には多くの物があり、鈴木さんは片付けを巡って何度も母親と衝突したといいます。
しかし、単に「捨てる」のではなく、「ちょうだい」「もらっていくね」と声をかけることで、母親が納得して物を手放してくれるようになったそうです。
このエピソードは、親の介護だけでなく、私たちがいつか直面する可能性のある「実家じまい」を考えるうえでも非常に参考になります。
ファイナンシャルプランナー(FP)の立場から見ると、実家じまいで重要なのは不用品を処分することだけではありません。
親が元気で判断能力があるうちに「物・お金・重要書類・住まい・介護」の5つを整理しておくことが、その後の家族の負担を大きく左右します。
今回は、鈴木蘭々さんの母親の介護を振り返りながら、親が元気なうちに始めたい実家じまいについて考えてみます。
鈴木蘭々は母の介護をきっかけに実家の片付けを開始
報道によると、鈴木蘭々さんの母・節子さんは87歳。
鈴木さんが本格的に母親の生活を支えるきっかけとなったのが、2021年春の圧迫骨折でした。
当時、母親は鈴木さんの自宅から電車で約1時間半離れたマンションで一人暮らしをしていたといいます。
骨折後は以前より動作が重くなり、訪問介護など第三者による見守りが必要だと感じるようになりました。
ところが、そこで問題となったのが実家にあふれていた大量の物でした。
母親と何度も衝突した実家の片付け
鈴木さんとしては、仕事の合間に実家へ通うため、限られた時間の中で効率よく片付けたい。
一方、母親にとっては、自分で選び、長年所有してきた思い出の品です。
娘から見れば「もう使わない物」でも、母親にとっては大切な物だったのでしょう。
片付けを巡って親子で何度も言い争いになったといいます。
これは決して珍しい話ではありません。
実家じまいでは、
「これ、もう使わないよね」
「捨ててもいいでしょう」
と子どもが判断しても、親からすると自分の人生そのものを否定されたように感じる場合があります。
実家じまいで最初に必要なのは、処分する技術よりも親の気持ちを確認することなのかもしれません。
「ちょうだい」で変わった鈴木蘭々の実家整理
そんな中、鈴木さんは一つの方法に気づきました。
母親に「捨てるよ」と言うのではなく、
「ちょうだい」
「もらっていくね」
と伝えることです。
すると、母親は比較的すんなり渡してくれるようになったといいます。
この話には、実家じまいを考えるうえで重要なヒントがあります。
「捨てる」と「譲る」では親の受け止め方が違う
高齢の親にとって、長年使ってきた食器や洋服、趣味の品などには、それぞれ思い出があります。
そのため、
「不要だから処分する」
という子どもの論理だけで進めるとうまくいかないことがあります。
「これは誰かに使ってもらう」
「私が引き取る」
という形で整理すると、心理的に受け入れやすくなるケースもあるでしょう。
もちろん、本人の意思を無視して財産を勝手に処分することは避けなければなりません。
大切なのは、親自身が判断できる段階から少しずつ整理を始めることです。
鈴木蘭々の母は要介護1から要介護4へ
鈴木さんの母親は圧迫骨折から半年ほど経った頃、訪問介護やデイサービスを利用するようになりました。
当時の要介護度は「要介護1」でした。
しかし2023年夏には脳梗塞を発症。
さらに2026年5月には右脚を骨折し、車いす生活となりました。
その後、要介護度は「要介護4」となり、2026年7月に有料老人ホームへ入所しています。
わずか数年間で生活環境が大きく変化したことになります。
ここはFPとして非常に注目したい部分です。
FPが考える「実家じまいは親が元気なうち」が重要な理由
親の介護は、必ずしもゆっくり始まるわけではありません。
転倒や骨折、脳梗塞などをきっかけとして、突然生活が変わることがあります。
そして介護度が上がるほど、子ども側が確認しなければならないことも増えていきます。
①預貯金や年金を確認しておく
まず確認しておきたいのが親のお金です。
最低限、
- 預貯金のある金融機関
- 年金収入
- 保険
- 証券口座
- 借入金
- クレジットカード
- 毎月の固定費
などは整理しておきたいところです。
「貯金がいくらあるの?」と突然聞くと抵抗を感じる親もいるため、
「介護が必要になった時に困らないよう、一緒に整理しておこう」
という形で話す方が現実的でしょう。
②重要書類の場所を確認する
実家じまいでは、不用品の中に大切な書類が紛れている可能性があります。
特に注意したいのが、
- 不動産関係書類
- 預金通帳
- 保険証券
- 年金関係書類
- 実印
- 印鑑登録証
- 遺言書など相続関係書類
です。
不用品回収業者へ依頼する場合でも、いきなり大量処分するのではなく、重要書類や貴重品がないかを先に確認することが大切です。
③介護にかかるお金を確認する
介護が始まると、実家の片付けだけでなく介護費用も家計に影響します。
介護保険サービスの利用者負担は原則1割で、一定以上の所得がある場合には2割または3割です。
また施設サービスでは、介護サービスの自己負担とは別に、居住費・食費・日常生活費などが必要になります。 (介護検索)
そのため、
「介護保険があるからほとんどお金はかからない」
と考えるのは危険です。
特に有料老人ホームは施設によって料金体系が大きく異なるため、入居一時金や月額費用を事前に確認する必要があります。
一方、介護サービス費の自己負担が一定額を超えた場合には「高額介護サービス費」により負担が軽減される仕組みがあります。
所得区分によって上限額が設定されているため、利用できる制度を確認することも重要です。 (厚生労働省)
判断能力があるうちに「お金の管理」も話し合いたい
実家じまいで意外に見落とされやすいのが、親の判断能力が低下した後のお金の管理です。
認知症などによって判断能力が十分でなくなると、不動産や預貯金の管理、介護施設との契約などを本人だけで行うことが難しくなる場合があります。
こうした場合に利用できる制度の一つが「成年後見制度」です。
法務省によると成年後見制度には、判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人などを選任する法定後見制度のほか、本人の判断能力が十分なうちに代理人を決めておく「任意後見制度」があります。 (法務省)
すべての家庭で成年後見制度が必要というわけではありません。
しかし、
「親のお金を誰が管理するのか」
「施設への入所が必要になったら誰が手続きをするのか」
「実家を将来どうするのか」
といったことは、親が元気なうちに話しておく価値があります。
実家じまいは「捨てる作業」ではなく家族の将来設計
鈴木蘭々さんのケースから特に感じるのは、実家じまいは一日で終わるイベントではないということです。
鈴木さんも母親の介護を続けながら少しずつ部屋を整理し、母親が施設へ入所した後に最後の片付けを行っています。
FPの立場から考えると、理想的なのは介護が必要になる前から、
物 → 書類 → お金 → 住まい → 介護
という順番で少しずつ整理していくことです。
親が元気なうちなら、
「この着物はどうしたい?」
「通帳はどこにある?」
「もし一人暮らしが難しくなったらどうしたい?」
と本人の希望を確認できます。
ところが、判断能力が低下してからでは、本人の意思を確認すること自体が難しくなる可能性があります。
だからこそ、「まだ元気だから早い」のではありません。
元気だからこそ実家じまいを始められるのです。
まとめ
鈴木蘭々さんは、母親の介護をきっかけとして実家の片付けに取り組み、時には母親と衝突しながらも生活を支えてきました。
このエピソードは、多くの家庭にとって決して他人事ではありません。
実家じまいというと、大量の家具や不用品を処分することをイメージしがちですが、本当に重要なのはそれだけではありません。
親の財産、重要書類、住まい、介護、そして本人の希望を整理しておくことまでが「実家じまい」だと考えておくとよいでしょう。
親が高齢になってから一度に整理しようとすると、親にも子どもにも大きな負担になります。
50代、60代の子世代にとっては、親が元気な今こそ話し合いを始めるタイミングです。
まずは実家へ帰った際に、
「これからも残しておきたい物はどれ?」
という会話から始めてみてもいいのではないでしょうか。
物を整理することをきっかけに、介護やお金、これからの住まいについて自然に話せるようになれば、それこそが将来の家族を守る「実家じまい」の第一歩になるでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
介護制度や成年後見制度の利用、財産処分などについては、個別の状況に応じて自治体、地域包括支援センター、司法書士・弁護士などの専門家へご相談ください。
それでは、ありがとうございました!

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